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【他人事ではない!】八王子市の不正受給事件から学ぶ、通勤手当のチェック体制とリスク

HANS社会保険労務士法人

【他人事ではない!】八王子市の不正受給事件から学ぶ、通勤手当のチェック体制とリスク

こんにちは!名古屋市中村区(名古屋駅)にある社労士事務所のHANS社会保険労務士法人です。

先日、東京都八王子市で、市職員97人による通勤手当の不正受給が明らかになり、総額900万円を超える返納と懲戒処分が行われたというニュースがありました。
「公務員の不祥事」で片付けられがちですが、実はこの問題、一般企業にとっても非常に身近なリスクであり、教訓とすべき点が多々あります。

今回は、この八王子市の事件を教訓に、一般企業で起こりがちな通勤手当の「不正三類型」を明らかにし、その防止策を解説します。

1. 通勤手当の典型的な「不正三類型」とは?
通勤手当の不正受給は、従業員が意図的に虚偽の申告を行うことで、実際にかかっていない費用を会社から受け取る行為です。
八王子市の事例を含め、典型的な不正受給のパターンは以下の3つに分類されます。

不正の類型

①虚偽の住所:実際に住んでいる住所とは異なる遠方の住所を会社に申告し、実際より高額な通勤手当を受ける。

②虚偽の経路:実際に利用している安価な交通経費ではなく、高額な定期券代が必要な遠回りな経路を申告する。

③虚偽の手段(八王子の事例):徒歩や自転車で通勤しているのにも関わらず、バスや公共交通機関を利用していると偽って定期券代を受給する。

これらの行為は、企業の規定に反するだけでなく、詐欺罪に問われる可能性もある懲戒処分の対象となる重大な不正行為です。

2. なぜ不正を見逃してしまうのか?
八王子市でこれほど大規模な不正が長期間にわたり見過ごされてきた背景には、「性善説に基づいたチェック体制の甘さ」があったと考えられます。

• 申請の検証不足:申告された経路が「最も合理的で安価な経路」であるか、企業側で検証していなかった。
• 証拠の不備:定期券のコピーや領収書の提出を、異動や転居の都度、義務化していなかった。
• 定期的な監査の欠如:年に一度など、全従業員を対象とした現住所や通勤手段の実態調査を行っていなかった。

3. 社労士が推奨!不正を根絶するための緊急チェックリスト
不正を未然に防ぎ、従業員の信頼を守るために、貴社が今すぐ行うべき対策をまとめました。

アクション

①ルール周知の徹底:通勤手当支給規定に、「虚偽申告は懲戒解雇を含む厳正な処分の対象となる」旨を明確に記載し、全従業員に再周知する。

②証拠書類の提出義務化:新規申請時や変更時に、必ず定期券の領収書(日付と金額が確認できるもの)や定期券の現物(またはコピー)の提出を義務化する。

③実態調査の実施:年に一度、全従業員を対象に、申告住所と現住所が一致しているか、実際に利用している交通手段に虚偽がないかを確認する調査(現物確認や抜き打ち検査を含む)を実施する。

④チェック体制の強化:交通費精算システムや地図検索ツールを活用し、申告経路が「最も安価で合理的か」を労務担当者が必ず検証するプロセスを確立する。

通勤手当の適正な管理は、単なる経費削減ではなく、企業のコンプライアンス(法令遵守)体制の根幹です。八王子市の事例を「対岸の火事」とせず、貴社のリスクを最小限に抑える対策を速やかに講じましょう。

社会保険労務士 間瀬夏世